【む】

*無理*


「は?無理」


私の付き合ってる彼の口癖は「無理」らしい。


照れ屋な彼は


私が下校時間に手を繋ごうと言うと、「無理」という。


別にそれくらいいいじゃんって


抗議しても「無理」という。


交換ノートしようっていう提案も「無理」で


電話毎日したいなっていう希望も「無理」


こんなに無理、無理言われたら


私のことなんて好きじゃないんじゃないかって思って落ち込んだ。


本当になんで彼は私と付き合ってるんだろう……。


そんな時、私は同じクラスの男子に呼び出された。


人がいない屋上。


来るのは初めてですごく緊張した。


「好きです、付き合って下さい」


彼の要件はそれだった。


初めての告白に少し顔を赤らめる。


「本気で好きなんだ、付き合ってほしい」


真剣なまなざし。


きっと私が好きな彼はそんなまなざしを私に向けてくれない。


それでも、私は彼が好きなんだ。


ごめんなさい、


そう断ろうとした時


「無理」


私の大好きな彼はそう言って私を引き寄せた。


「コイツ、俺の彼女だから無理

手出さないでくんない?」


真剣で必死なまなざしに

私の不安はどこかに吹き飛んでしまった―。