私は、なぜか彼の言うとおりに川村さんに伝言をしてしまった。最初は、仲良し三人組の鼻をへし折ろうと考えていたが、10年後に三人が出会ったらそれは面白いだろうと思い直した。
 彼女から手紙を渡されて、興味があったので私は帰りのバスの中で手紙を読んでしまった。
 内容はただの森山さんの勘違いによる喧嘩別れの話だった。川村さんらしく、きちんと説明していればこんなことにならなかった、自分がいけないのだと書いてあった。
 森山さんに対する怒りはなかった。
(何だ。てっきりドロドロした内容かと思ったのに、つまらないわ)
私は手紙をしまって、封をした。
暗い夜空を彩る、町の街灯が目に嫌になるほど入ってくる。
 (これが、10年後に開かれるのか。でもきっと私なんて、10年後手紙の内容を忘れている)
 10年後、彼らはどんな気持ちでこれを読むのだろう。そして彼らの関係はどうなるのだろう。関係は修復するのか。それとも、こじれてしまうのか。
10年後、長い時間だけど楽しめそうだ。私は、バスを降りて家路についた。
『10年後のタイムカプセル』完