私の選択



そこから、部屋に通すまでも、通してからも大した話はしなかった。


「て、適当に座って……」


強引な態度で部屋まで来た割に、彼は私に対して何かしてくるようなこともなく、私に言われるまま部屋の端の方に腰を下ろして、そのまま無言で膝を抱えてジッとしていた。


『こんにちは!』


あの年頃の男の子にしては珍しく、会うと必ず笑顔で挨拶をしてくれた。


そんな彼が笑顔をなくして小さくなっている姿が、なんだか、捨てられた子犬みたいに見えた。