私から始めようとしたキスはどうやらユキトが主導権を握ってしまったらしい。
「ゆ、きと…ユキトっ」
『あー、新学期一発目で遅刻だな』
ユキトが腕時計に目を向けた瞬間、私も壁に掛かった掛け時計に目を走らせた。
時刻は6時50分。7時半には生徒会によるあいさつ運動(と言ってもどちらかと言うと生徒の身だしなみチェックが主だけど)が始まる。
いつもなら家を出ているハズのこの時間。五分前つまり7時25分には生徒会の点呼完了。
通学時間は30分程。
だけど、朝の通勤ラッシュをなめてもらっては困る。
通常30分でもラッシュに引っかかると30分ではまずたどり着けない。
「大丈夫だよ」
『いや、もうアウトだろ』
「アレがあるじゃん?」
『…ダメだろ』
「ユキトなら出来るよね?」
『、』
「私を遅刻させる気?」
『お前が起きねーのがそもそもの原因――』
「ユキト…?」
精一杯、甘えた声を出すとわざとだって分かってるだろうにユキトは私を許す。
『、――分かったよ!』
、ほらね。
