駅から徒歩15分。便利な所に私が通っている学校がある。
学校に行く前に駅に寄る。
それにしても…あっつい!!
ガバッ!
「おはよおおお!由那ああああ!」
来た…
「んな嫌そうな顔するなよぉ。俺、泣きそう!」
勝手に泣けば?くっつくな!
毎日毎日、よくやるなぁ。
「ちょ、置いてくな!まってよ!」
はぁ…
こいつは、幼馴染の『野宮 連』。
毎日、駅で抱きついてくる。
暑いし、恥ずかしいからやめてっていってるのに…やめない。無視だ、無視。
ほら、今も。「待ってって!由那!」って…
大きい声出さないでほしいわ。
大嫌い!!!

「あ、由那と野宮くん。おはよー」
「仲いいよねー、羨ましい。」
教室に入ったら親友の、『雪村 紅』とその彼氏、連の親友でもある『風見 海斗』に言われてしまった。
「別に、仲良くないし!」
毎日、いちいち否定するの疲れるんだけど!
「ま、うちらもラブラブだけどね、海斗♡」
「だな♡」
うざっ!
「あ、連くぅん!おはよぉ♡」
げ、とでも言いたそうな連の顔。
いつもの事。
「由那、逃げるわ。俺がいなくなると寂しい?」
なに言ってるんだ、この馬鹿は。
「まったく。さみしくなんかならないから、はやくどっかいけ。」
えぇ、と言いながら走り去って行った。
言っていったぞ。
えらい、由那。
なーんて、心の中で一人で会話している私は、そうとう痛い。
やっぱり、嫌いだ。幼馴染なんて。
いつも連を追いかけ回している、悪趣味な女の子『後藤 愛羅』ちゃん。
長いストレートの髪と、大きくてクリクリの目が特徴的。すっごく、かわいいんだけど…
どこまでも連を追いかける愛羅ちゃん。
趣味悪いんじゃないか、って思う。
まぁ、たしかに少しはカッコ良くなったかもしれないけどさ?昔を思い出すと、やっぱり幼馴染と恋なんて、ムリだと思
う。
「連、かわいそうだな…」
「本当。助けはしないけど。」
助けないんかい!我が親友、とその彼氏。
「あんな奴、追いかけ回されとけばいいのよ。」
冷たい私の一言に、親友一言。
「本当は、気になってるくせにぃ」
もぉ、と言いながら私の腕を小突いてきた。
気になってなんか、無いんだけど…
あ、そう言えば…
駅の“イケメン”の話、してないや。
一応、しとくかぁ…
「紅ー!ちょい、いい?海斗も一緒でいいからさ。」
「どしたー?なんかあったの?」
「と、とりあえず…こっち来て!」
そう言って隣の空き教室に入った。
紅は、私の久しぶりの真剣な表情に、なに?なに?って、ワクワクしているように見えた。


よし、話そう…
「実は…」
駅の“イケメン”に出逢ってから、今日までの出来事を話した。
私が話している間、紅は、それで⁈とか、嘘ー!とか一応リアクションが大きかった。
海斗はうんうん、と頷きながら紅とはちがって、落ち着いて話を聞いてくれた。
話し終えた時、2人の表情は少し暗かったような気がする。

それからも、教室に戻ってみんなで話しててもなぜか、違和感。
なんだろ…
みんなの表情が、暗い。