チュンチュン…チュンチュン…
朝に聞こえる鳥の声にイライラする。
朝は苦手。
ていうか、間に合わないよ…
もぐもぐと口に食パンを詰め込んで、さっさとメイクを済ませた。
「いってきまーす」
玄関に座って靴を履いているとき、リビングから聞こえるママの小言。
「朝は本当に機嫌が悪いのね…。治らないのかしら。」
聞こえない、聞こえない。
そんなこと考えているうちに、時間はあっという間に過ぎていっちゃう。
ダッシュしなきゃ!
ご近所さんからは「今日は一段と走るのはやいねぇ。」なーんて、ちょっとした朝の有名人。
私は、駅にいる“イケメン”を、今日も探
している。
一ヶ月前、滅多にこない駅にいったらその“イケメン”を見つけた。
一目惚れだった。
はじめてだったから、最初はあり得ない!って思ってたけど…気づいたら、毎日あの時間に駅に通っていた。
好き、なのかな。
恋なんて、小学生以来だし、わからないや。
あ、いた…
スラっと長い足、くっきりとした顔立ち、優しそうな瞳。もう、吸いこまれそうになった。
今日もかっこいいなぁ…
名前も年齢もわからないけど、これだけはわかる。
左手の薬指。銀色に光る指輪。
婚約してるのかな…
厄介な人に恋をした。
私は、本当に馬鹿だ。

馬鹿な私の名前は『秋元 由那』。
高校1年の夏、久しぶりに恋をした。