私は、さほど意味のないピンクのストラップがついたスクールバックからスライド式の携帯をとりだした。
かれこれ4年も愛用している。
少し傷がついているが、気にするほどでもない。

「・・・はい」
「おぅ、さんきゅー」

彼は携帯を受け取るとボタンを押し、耳にあてた。
私の携帯はすっぽりと彼の手の中に収まっている。
手はごつごつしていて骨ばっていて、いかにも男の人の手といったかんじだ。
どこかに電話をかけているらしいが、相手は一向に出ない。
彼は少し顔を歪めて通話終了ボタンをおし、私に携帯を差し出した。
私は反射的に携帯を受け取ろうと手を伸ばした。
が、、、

「・・・」

携帯はまだ彼の手の中。
なぜなら私の手を彼の携帯を持っていない方の手でつかまえているから。
困惑して固まっている私に彼は表情をかえず、こういった。

「お前の家どこ?」

??????
脳内?マークだらけの私はきっと変な顔をしていたにちがいない。
どうしてこの男に住所を教えないといけないのか?
・・・本当に意味がわからない。

「・・・で、どこ?」
「は、はぁ?なんで私があんたに住所教えないといけないのよ!」
「え、別にいーじゃん。ケチ!」
「ケチって・・・」
「携帯返してほしーでしょ?」

返してほしいもなにも、、、
それ私の携帯なんですけどーーーっ!

「・・・だってそれ私の携帯だしっ!」
「でもいまは俺がもってる」
「ぐっ・・・」
「場所だけ教えてよ。そしたら携帯返してあげる」

彼は不敵に笑みをこぼし、私をまっすぐ見つめてくる。
本当に悪魔のような男だ。
・・・手ぇ、まだ放してくれないし。
場所を教えれば携帯を返してくれるんだから、教えたほうがいいのだろうか。
なんか悪い予感もするけれど・・・。
しょうがない。
携帯のためだ・・・。

このときの私は、この行為が最悪のシナリオをよぶことを知らない・・・。