俺は、気付いたら、
走り出していた。
勝者サインもいつもより
大分適当で…
これ、読めるのか?
なんて自分で思う。
試合が終わって、
ダッシュで向かった先。
んなの決まってる。
コーチでも、女共でも、
友達でもない。
他の誰でもない…おまえのもとに。
亜弥南 姫華。
内気な愛しい君のもとへ…
階段をかけ上がって、
帰る支度をする女子のもとへ走った。
やべぇ…結構キツい。
かっこわりぃ…
でも、そんなこともどうでもいい。
「え…どうしたの?
竜弥ぁ~珍しいじゃん♪
誰に用事?」
「はぁ…はぁ…」
「そんなに、走ってきたのぉ?
んもぉ~竜弥、かわいぃ♪」
「キモい。触んな。」
あ…ヤベ。
言っちゃった。
女共が驚いた顔で、こっちを見る。
ウザい。ウザい。ウザい。ウザい。
だから俺は指差した。
愛しい君を。
「え?竜弥…
亜弥南さんに用事?
マジで…」
口々に同じようなことを言ってる女子。
どうやら、亜弥南を呼び出したことが
気にくわないらしい。
でも。俺は知ってる。
亜弥南がういてること。
他のやつらにいじめられてること。
特に気にしなかったけど…今は。
『 守りたい』そう思う。
「亜弥南…来て…」
俺が決死の思いで発した言葉。
それなのに、亜弥南は
首を横に振った。
なんで…?
あぁ~もう!めんどくせぇ…
「亜弥南 姫華さん。
少し話があるので、来てください。」
やべ…俺、ダサくね?
でも。気持ちを伝えたくて
仕方がないんだ。
それでも、亜弥南はうつむいたままだから。
くそっ!
どこまで俺に恥かかすんだよ!
そう思いながら俺は、
亜弥南のひょろっこい手首を掴んで、
走り出した。
俺は、会場の外に出て、
足を止めた。
………………?
なんで、こいつ震えてんだ?
俺、何かしたか?
心配になって、
手を伸ばすと、亜弥南は
ビクッと肩を上げた…
そうか…こわいんだ。
俺に何かされるんじゃないかって…
女子共にされるみたいないじめを、
俺にもされるんじゃないかって…
でも、俺は、そんなことしないよ。
亜弥南…俺の目を見てよ…


