≪私≫

 昨日とは打って変わって、今日私は怯えている。いつだったか、経験したことのある感覚。大切な人が去っていく感覚。繰り返さないと決めたはず。だけど、また握り潰してしまう。一緒にと誓った未来を。
  
 それでも止められない。止めなきゃ。何度そう念じても。お願いだから、私を止めて。心の中で、何度も願う。でも、表に出てくる言葉はすべて、幸せな時間を切り裂いてしまうものばかり。
  
 私があの日声をかけなければ、こんなことにならずに済んだのかな?何も話さなければよかったのかな?嫌わないでって言われて嬉しかったな。初めて貰う言葉の多さにびっくりして、戸惑って、喜んで。こんな幸せを、ずっと抱きしめていたかったな。“お友達"になりたかったな。
 
 でも叶わない。涙がひとしずく頬を伝った。ごめんなさい。そして、優しくしてくれたひとのすべてを拒否した。