駅に着くと遊佐はもう来ていた。


「遊佐」

「あ、柏野くん!」


遊佐は僕を見るなり嬉しそうに小走りでこちらに来る。


「今日も寒いねーっ」

「うん、そうだね」

「これからどこ行く?」


笑顔を絶やすことなく遊佐は疑問を僕に投げ掛け続ける。


「いや、僕はどこでもいいよ」


そうとだけ答えると遊佐は不服そうな顔をした。

でもまたすぐに言葉を続ける。


「そっか。じゃあ私の行きたいとこでいい?」


すると遊佐が僕の腕を引っ張り誘導する。


「ちょうど行ってみたかった喫茶店があるんだっ」


振り返り、またもう一度遊佐が見せた笑顔。

僕はそのとき何故か涙の笑顔がフラッシュバックした。

それと同時に胸が潰れそうなくらい痛くなった。