教室に入るなり僕は時耶がいないことを確認する。

亮輔が珍しく朝から教室にいたので時耶のことを聞いてみた。


「なあ、時耶は?」

「んぁ?あ、おぅ空希」

「時耶もう来てんの?」


今日は朝から数Iの補習がある。

時耶も数Iの成績が足りていないのはこんな仲だ、知っている。


「え、あー・・・えーと・・・」


言葉を濁す亮輔に腹が立ってくる。

知っているが言えない、といった様子。

涙と会っているのだろう。


「もういいわ」

「あっ、ちょい待てよ」


亮輔がその場を立ち去ろうとした僕の手首を掴む。


「なんだよ」

「お前らどうしたんだよ?」
「お前も、時耶も、涙ちゃんも」


僕は掴まれている手首をバっと振り払った。


「そんなの、僕が聞きたいよ」


そう冷たく言い放ち、自分の席に戻った。