1階に降りると母さんの声が聞こえた。

それは客室のほうからだ。

客室には父さんの仏壇がある。

こっそり見てみると母さんはその仏壇の前でなにか喋っていた。


「今日はね、空希が可愛い彼女を連れてきたくれたのよ」
「本当にいい子なの」
「あなたにも見せてあげたかったわ」


そう言う母さんの後姿は優しく、哀しそうだった。

僕は気付かれないように洗面所に向かった。

何故かここは気付かないふりをするのは正解だと思った。