ベッドの横にいつもはない布団がもう一つ敷き詰められている。

僕はベッドの方に腰掛けた。

するとキィっと音を立てて部屋のドアが開いた。

ドアの向こう側になっていたのはアスだ。


「おぅ、アス」

「なあソラ」

「ん?」

「べつに、なんも無かった」

「なんなんだよ」


僕は少し呆れた様子で笑った。


「暇だったから」
「てゆかなんか食いもんねぇの?」

「ねぇよ・・・あ、そーいや飴なら学校の鞄に入ってるよ」


するとアスは無言で僕の鞄をあさり出す。

そして飴を見つけるとそそくさと自分の口の中に放り投げた。

一見、無表情だがずっと一緒にいた家族には分かるその表情の違い。

美味しそうに飴を口の中で転がす。


「さっき晩飯食ったばっかだろ」

「腹が減っては戦は出来ぬ」

「これからなんの戦すんだよ」


と、ツッコミをいれながらも僕も残っていた飴を拾い、口に入れた。

マスカット味の爽やかな風味が口に広がった。