─9月上旬─


僕は"あの日"以来から涙と急激に仲がよくなった。


「空希くーん!」


僕の頭上で声がして上を向くとそこには柵から身を乗り出して僕に手を振る涙の姿。

僕は次の授業が体育でグランドに出ていた。


「涙、危ないよ」


僕は手を振り返しながらも涙に注意をする。

名前もいつしか下の名前で呼び合うようになった。

このことは亮輔も知ってる。

でも亮輔は涙に本気ではなかったみたいで、とくにゴタゴタはなかった。

まあ僕も仲間の好きな人を横奪いするほど卑劣でもない。

できるなら避けたいくらいだ。


「大丈夫だよーっ」
「落ちないよーっ」


涙の甘ったるい声と特徴のある喋り方は周りによく響く。


「知らんぞー、落ちても」

「もし落ちても空希くんが助けてくれるんでしょーっ?」


身に覚えのない約束に僕は少し苦笑した。