「じゃあ椎葉さんのルイはどう書くの~?」


身を乗り出して言って来たのは亮輔だ。


「えっと、椎葉・・・は、分かるよね?」
「涙はナミダって書いて涙だよ」

「え、ナミダ?」


予想外の言葉にそこにいた僕と時耶と亮輔は少し唖然とする。

人の名前にナミダの一文字とは、椎葉さんの親も大胆なことするな・・・。


「あはは、すぐ誤解されちゃうんだ」


椎葉さんのその言葉が気になって今度は僕が聞き返した。


「誤解って?」

「ナミダって聞くと"なんでナミダなの?"とか思っちゃうよね?」
「あとは"泣いてる"ってイメージもあるし」

「まあそうだね、正直」


僕も相槌をしながら椎葉さんの言葉に耳を傾ける。


「でもナミダが無いと人間は笑顔になれないんだよ?」
「だからナミダは大切なんだよ」
「ナミダは次、笑顔になるための準備なの」


言い終えると椎葉さんはえへへっと柔らかく笑った。


・・・笑顔の準備。


「だから、いつでもちゃんと笑顔になれるなれるようにって"涙"なの」