「そういや空希」


僕の名前を呼んだのは時耶。


「手紙、読んだのか?」

「・・・いや、まだ」


時耶に悪気はないと分かっていても返事は冷たくなってしまう。


「そっか。いつか読める日が来るといいな」

「あぁ、そうだな」


沈黙が4人を包む。


「涙ちゃん、」


沈黙を破ったのは時耶だった。


「涙ちゃん、卒業式に出たいって言ってた。みんなと最後まで一緒にいたいって。だから学校も無理して来てたんだ。本当は体も辛かったはずなのに」

「・・・」


本当は涙の手紙はここにある。

まだ封は切っていないけど僕の鞄に入っている。

もし、読めると思えるときがきたら読もう、と決めていたから。


「なあ空希、無理にとは言わない。でも、いつまでも過去のことに囚われてちゃいけなと俺は思う」


時耶の瞳は真っ直ぐ僕を見つめた。

その眼差しは時に涙と似ている気もした。