─数ヵ月後.卒業式─


今日は卒業式だ。

冬を越えた桜の蕾は膨らみ始めていた。

まだ風は冷たいが春は着実に訪れようとしている。


「空希!」


聞き覚えのある声で僕の名前を呼んだのは亮輔だ。

よく見ると亮輔の後ろに時耶や憲太もいた。


「もうすぐ集合だって、行こうぜ」

「そっか。おう、行くか」


あれから涙の手紙はまだ読んでいない。

まだ読めるほど心は片を付けられないでいた。

そして遊佐とはあのあとすぐに別れた。

別れを切り出したのは僕ではなく遊佐だった。

僕はどのみち別れる心算(つもり)だったのでそのまま別れた。


「おい空希、早くしろよ!」


行くと言っておきながらなかなか動かない僕に憲太が急かす。

僕はやっと動き出し、三人のところに駆け寄った。