泣きじゃくり、精神的にも身体的にも疲れた僕は病院の長椅子で眠ってしまった。

あれからどれだけ泣いただろう。

もう記憶も断片的にしか思い出せない。

だけど、あの場にいた3人は何も言わず僕の傍にいてくれた。


「空希」


僕の名前を呼んだのは時耶だ。

僕は赤く腫れた重い瞼(まぶた)を持ち上げて時耶を見上げた。


「これ、涙ちゃんから」


時耶がそう言って僕に差し出したのは綺麗な封筒に入った手紙だ。

女の子らしい花柄が散りばめられている封筒は本当に涙を思い出させる。


「涙ちゃんが、手術の前にお前に渡してくれって俺に頼んだんだ」
「だから受け取ってくれ」


僕は何も言わずその封筒を受け取った。

受け取った瞬間、また胸に鉛を落とされた様な重さが圧し掛かった。

痛みきってもう感覚など麻痺しているはずなのにまだ胸は痛み続ける。