そして看護婦さんに呼ばれ、手術の準備が始まった。

最初は前投薬という手術前の安定剤のような役割の注射を刺した。

手術室に運ばれる間、私の頭には今までの奇跡のような日々が脳裏を過ぎる。

空希と出会った事。

好きになった事。

付き合う事になった事。

指輪をもらった事。

空希の家にいった事。

空希が私の隣にいてくれた事。

そして、自分から突き放した事。

後悔もした。

でも、空希がいてくれたからこんな感情を知った。

恋がこんなに苦しいなんて、恋がこんなに哀しかったなんて、知らなかった。

空希と出会って、初めて知った。

本当にいい恋だった。

ありがとう、本当に本当に大好きだったよ。

そして私は麻酔とともに目を瞑(つむ)った。

暗い闇に落ちていく。

すると目から涙が落ちた。

きっとこの涙は、空希に恋が出来て、奇跡みたいな日を過ごせた嬉し涙。