遠い記憶を遡(さかのぼ)れば想い出す。あの暑い夏の日の縁日での一コマ。


  丁度その時期はお盆休みを利用して僕の双子の兄大翔(ひろと)が両親に彼女を紹介すると言って、半年振りに田舎に帰って来た日でもあった。


  そして両親との挨拶を無事に済ませた兄の恋人坂口真央里(さかぐち まをり)は、とても珍しいダリアの花柄の浴衣を持参して来ていた。だから早速僕の母に浴衣の着付けを手伝って貰い、浴衣に着替えた。


  そして君は手早く器用にロングの髪をアップにして、母から渡された団扇(うちわ)を蝶々結びの帯に突き刺した。