青い空…
暖かい風…
揺れる木々…
季節は、春…
この季節を待ちわびた緑達が、力強く、生き生きと芽を伸ばす…
暖かな太陽が、
大地を照らす…
植物を…人々を…
命を持つ、全ての生き物を、照らす…
彩りどりの、華やかな生花達が、花弁を揺らし、優しい香りを漂わせる…
そんな中、一際大きくそびえ立つ、ある大きな木の下に、静かに腰を下ろす、1人の女性の姿があった…
風が吹く度、彼女の長い綺麗な髪が、しなやかに踊る…
彼女は、スカートから伸びる、細い足を伸ばし、木に背を預けながら、ちっとも変わらない空を眺めていた…
真っ青な、空…
目を覚ました時、目の前で笑っていてくれた、彼の瞳と同じ、色…
心を癒やしてくれて、安心させてくれる、貴方の瞳…
目を覚まして、記憶のない私に、辛い顔1つ見せずに、ずっと、笑いかけてくれたよね…
私は知っているのに…
貴方のその笑顔を…
貴方の綺麗なその笑顔を…
知っているのに…
思い出そうとすると、胸が締め付けられて…
苦しいの…
心が…体が…
思い出す事を、拒むの…
忘れろって…
思い出すなって…
心が、叫ぶの…
ねぇ…
貴方は知ってるんでしょ…?
私の過去を…
私の、全てを…
私は、思い出さなくて、いいの…?
過去を、全てを…忘れて、いいの…?

