「その展示会で俺は毎年金賞を取ってた。
でも、もう一人毎年金賞を取っていた人がいた。

この字、いいなって思ってた作品があったんだ。それには金賞の印が付いていて、俺ともう一人の金賞の作品だった。


それも毎年目に留まるのはその人が書いた字。そして金賞の印。

でも、同じ金賞でも自分の中で、この子には負けたって思ってた。毎年毎年。

それから、年始が楽しみになった。
今回は俺が勝ってやる、とか思って。

ある年、例年の通り金賞の印の付いたその子の作品の字を見て「今年も負けたな」って思った。
その時、「今年も金賞取ったよ!」ってその作品を指差しながら言った子がいた。

その作品には矢吹優って書かれてた。
いつも俺の見る作品にはその名前が記されてた。

文字しか見たことのない矢吹優を俺は、初めてその時姿を見たんだ。

それがお前、優だよ。」




驚いた。
私は自分が金賞取れたかしか気にしてなかったから。

あの会場にはいつも陽がいたんだ。

しかも陽がいつも私の作品を見ていたんだ。


信じられない。