童顔彼氏




それ以上は、聞きたくなかった。
耐えられなかった。

なのにまだ、私は、私の名前を呼ぶ陽の声に対して胸が苦しくなる。


『俺が優と街を歩いてると、よく優の友だちに会うんだけど、』


私には分かる。この陽の話の続きが。

私の弟、純に間違えられて迷惑だと言いたいのだろう。
陽のコンプレックスである童顔。

「純くん?」なんて言われる度に、陽はそんなに傷ついていたのかな。




そのまま走って昇降口を抜けた。
涙を見られたくないのに、生徒がちらほらいたので、裏に少し回ろうとした。


でも、我慢の限界で、裏に回る途中にある自動販売機の前に辿り着くと、自動販売機に寄りかかって泣いた。


幸い生徒はいなかった。


我慢していた分の涙を思い切り発散した。