なのに。
陽はまた、私の頭の中を支配するんだ。
「あれ、優帰らないの?」
放課後になり、美子が私に話しかけた。
「ああ、うん。日直だから日誌書かないといけないんだ。」
「そうなんだ。頑張ってね。じゃ。」
「ばいばい。」
ああ、日誌なんて本当に面倒くさい。
というか日直自体面倒だ。
帰りのホームルームは16時に終わったはずなのに、日誌を書き終え、窓を全て閉めて日直の仕事を全部終えた頃には、16時30分になっていた。
私の帰りの支度をしなくてはいけなかったので、その5分後くらいにやっと教室を出た。
誰も居ない教室。
他のクラスもきっとそうだろう。
しかし、隣のクラスを通り過ぎようとした時に、その教室からは話し声が聞こえた。
いつもなら気にしないのに、空いたドアから少し覗いた。
陽??
中に居たのは、陽と、陽の男友達二人とで、三人だった。
今は陽の姿を見たくないのに。
だから、その場をすぐに通りすぎようとして足を進めた。
それなのに、
「矢吹さんさ、」
という私の名前をあげる、陽の友だちの声が聞こえたので思わず立ち止まってしまった。


