動揺したのか。 陽の手の力が弱まった隙に、スルリと逃げた。 慌ててドアまで駆けてゆく。 陽は一体どんな顔をしているのだろうか。 私がドアに手をかけたとき、陽を見た。 私を追いかけずに、 先程の場所に留まっていた。 こちらを向いていた。そして、 冷たい眼で私を見た。 陽が私に罵声を浴びせることもなく、何も発せず、言葉にしなかったのがせめての救いだった。