どこからどこまで

「じゃあ3人で手ぇつなぐ?」

「どうしてそうなる」

「いった」


 提案をしてきた薫の頭に翔ちゃんがチョップを落とした。


「ごめんって。翔ちゃんを差し置いて俺が沙苗ちゃんの彼氏に見えるんだなって思ったらなんかちょっと優越感が………っていうか翔ちゃんだってつないでたじゃん、海で」

「何か言った?」
「すみませんでした」

「なんか翔ちゃんと薫の方が兄弟みたいだよねー」


 薫の後半の台詞が聞こえなかったが、なんというか男同士で通じ合っている雰囲気がいいなあ、と思ってしまう。今はあたしがいるからかこんな感じなのだろうが、2人きりになったらどんな話をするのだろうか。


「俺は近い将来、翔ちゃんに義兄(にい)さんになってほしいなあって思ってるよ、沙苗ちゃん」

「ん………?うん」

「さな、深く考えなくていいから」

「よくわかんないけど、うん」


 結局、薫はお土産コーナーにたどり着くまであたしの手を離してはくれなかった。今更ながら弟が心配になる。いわゆるシスコンというやつなのではないか、と。弟に彼女ができないのは自分のせいかもしれない、と。

 しかしそんな不安はぬいぐるみコーナーを目の前にした瞬間に消え去っていた。


「ペンギン……っ!」

「さなってそんなにペンギンすきだったっけ…?」


 翔ちゃんが今思い出しているのはまだ小学校にも入学していない頃、家族ぐるみで一緒に行った水族館でのことだろうと思う。今回来たところとは違う水族館で、あの頃のあたしは白イルカに夢中だった。とはいえ記憶はあやふやだ。


「すきだよ~。可愛かったな~、フンボルトペンギン」

「可愛かった。すっごいはしゃいでたね」

「何が可愛かったの?翔ちゃん」

「薫、」
「はい、黙ります」


 また2人の世界、だ。

 薫と翔ちゃんの会話を聞き流しつつ、あたしの頭の中は財布の中身と目の前のペンギンのぬいぐるみのことで頭がいっぱいになっていた。

 ペンギンとは言っても可愛い可愛いと騒いでいたあのフンボルトペンギンたちとは程遠い、デフォルメされたものだった。背は青く、お腹は白くてふわふわとしている。抱えるのにちょうどよいくらいの大きさだ。