どこからどこまで

 死ぬものだと思っていた浮舟の入水の結果に驚けば、呆れ声の翔ちゃんに手招きをされた。素直に従ってザブザブと音をたてながら2人のいるところまで向かうことにする。


「寒くないよ~。さっき外でたときよりだいぶあったかくなったし」

「見てる方が寒いんだって……」

「あ、パーカー返すね。ありがとー」


 2人の元までたどり着く頃には、海面はもうくるぶしの辺りのところにあった。さっきまで海水に浸かっていたところが風にあたって少し寒い。

 足は兎も角、上半身はぽかぽかとしていてパーカーはもう要らないほどだった。

 脱ごうとすればスッと翔ちゃんの手がのびてきて、開けっ放しだったジッパーをシャッと上げられてしまった。


「…………いや、いいよ。着てて」

「なんかやだなあー…、今の間」

「薫、」
「はいはい、お口にチャックしときます」


 2人の会話をBGMに、最後に1枚だけ写真を撮った。

 時間を確認すれば、そろそろ水族館の開館時間だ。


「楽しみだなー」


 誰に言うでもなく呟く。水族館なんて何年ぶりだろう。