「自立しなきゃなあ…」

「うん、無理だと思う」

「え~?」

「っていうか無理して自立しなくてもさ、しょーちゃんに彼女できたら嫌でも今の状況、変えてかなきゃなんないでしょ」

「え………」


 翔ちゃんに、"彼女"。


「え…えっ!?もしかして今まで考えたことなかったとか!?」

「返す言葉もございません…」

「………さすがさなだわ」


 そうだ、今まであまり深く考えたこともなかった。そもそも、そういう話題をもちこんだことももちこまれたことも全くと言っていいほどない。


「あたしが高校生のときに彼女いるかどうか聞いたっきりだ…」

「聞いたときはなんて?」

「ん?"大学入って彼女できたー?"って聞いたら"つくるつもりもない"、って」

「へぇ~?」


 突然ニヤニヤしだしたさこねぇから少し距離をとる。そういうさこねぇは一体どうなんだろうか。

 彼氏、いるのかな。やっぱり。

 そうは思っても今は聞ける状況ではないということは確かだ。


「な、なに」

「彼女つくる気もないって言うような男が彼女でもない女を家にあげて起こしてもらって家事までしてもらってるんだなあ~、って」

「それは、あたしがいとこで家族みたいなもんだから…」

「さなはそうかもしれないけど、向こうはどうなんだかねぇ?」


 そんな"家族みたいな"翔ちゃんを、少しでも意識した自分が言うのもなんというかアレだけど。

 さこねぇは意味あり気にボソッとつぶやいて、意地の悪そうな顔をしてあたしの方を見てきた。

 首をかしげると、少し困ったようにふわっと笑う。

 だって、わかんないものはわかんない。さこねぇに言われたことの意味が。

 こういった対応されると、やっぱりおねえさんだなあ、と思う。普段はタメ口で話しているし同級生だから忘れがちではあるが、さこねぇは3つ年上のおねえさんなのだ。


「あたしが教えちゃうより、自分で気づいた方がいいよ」

「えぇ~、さこねぇ~」

「はいはい、あまったれないの」