一人残され部屋を見渡すと、余計なものはいっさいないシンプルだがセンスのいい部屋だった。


色使いも暗くならない程度に黒い家具があり、テーブルはガラスに、白のソファーだった。


「私、全然覚えてないんだな、あの日のこと…」


そっとソファーに腰を下ろし、テーブルの上にあった医学雑誌を開いてみる。


パラパラめくっていると…あっ…


慎司が載っていた。


そこに写っている写真は医者の顔であり、私の知っている慎司ではなかった。


【循環器系の名医。若いながらに世界的にも実力を認められ、今では五本の指に入るのではないかと言われている…】


手が震えだし読むことが出来なかった。


そんな凄い人が私の隣にいて、私に告白をしてきた。


普通に考えてもあり得ないこと…


雑誌に写る慎司を見つめ、慎司を信じてない訳ではないが、気まぐれで私といるのでは?という思いもうかんできた。


違う…慎司さんは…そんな人じゃない…


もし、もしそうだったとしても……構わない。


私が信じる人を信じたかった。


たとえ傷ついても……


慎司さんの写真を見つめていると、ガチャっと扉の開く音が聞こえた。


反射的に顔を上げるとそこにいたのは慎司ではなかった。


えっ?!