空の下の約束

星野はフラリと屋上へきていた。


午前中は診察も手術もはいっていない。


本来なら今まで溜まっている事務的な仕事をやれる貴重な時間だが、気分的にやる気が起きなかった。


「飯田美空…」


なんてことない患者だ。病状も落ち着いているし珍しい病気でもない。なのに気になって仕方がない。


彼女の何が?彼女の環境?彼女の…涙?笑顔?


きっと全てだ…


医者と患者…


安い小説じゃあるまいし…


自然と笑顔が漏れる。


「その安い小説に気が散るのか…それもありかもしれないな…」


一風の強い風が頬を撫でる。


星野は向きを変え今行くべき場所へと向かっていった。


その顔には穏やかな笑みをたたえて…