空の下の約束

美空は星野が居なくなって布団から涙に濡れた顔を出す。


陽は登り一日の始まりを告げていた。


「恭ちゃん…私…どれくらい頑張ればいいの?」


青い空にそっと呟いた。





星野は病室をでてナースステーションへと向かっていた。


美空がいきなり走り出したこと、泣いていたこと、ナースが知っていると思ったからだ。


そこにはさっきのナースがいた。事情を問いつめると、最初は口を濁していたが、皆で話していたことを聞かれたかもしれないと口を割った。


その話の内容を聞き、星野は怒鳴ってしまいそうになる。


星野は美空が入院するときに実家に電話していた。保証人の欄に申し訳程度に小さく書いてあったからだ。


容態と病名を母親につげたが


「勝手に家をでて育てた恩義も忘れた娘なんて知らない。死んだらこっちに迷惑がかかるから死なない程度に治療してください。それともう連絡はしないで。まったくなんで家の連絡先なんて書いたんだか」


そうまくし立てて勝手に切ってしまった。


その事は誰にも話してはいない。


いや、話せなかった。


自分が患者の私生活まで踏み込む必要も、踏み込んではいけないことも知ってはいる。


でも、どうしても一人の医者ではなく人として気になってしょうがなかった。


入院中誰もお見舞いには来ていないと言うことは彼も友達も心許せる人がいないのではないかとも思っていた。


今までどうやって生きてきたのか…


あの子の屈託のない笑顔が目の前にちらついた。