祥子と金髪の外国人が出会ったのは、半年ほど前。


「あの。どうかされましたか?」

祥子が男に声をかけたのがはしまり。

それは、大学の帰りだった。
道端でうずくまる男は、頭を押さえていた。


あまりの男性の苦しみように、とっさに日本語で尋ねてしまった祥子。

とりあえず英語で言い直してみようと、口を開きかけたとき、

「大丈夫」

男性はまるで日本人のような流暢な日本語で答えた。

「大丈夫だから」

「でも…、病院に行った方が……。」


「気にするな。」

そんな、会話が続いて、男性の方がしびれを切らしたように、

「私から離れて! ……ぅ――…。」

「そんな…。」


しばらく、その場で男性の様子を見ていた祥子。
そのうちに男性の体調は回復した。

ゆっくりと立ち上がった男性は祥子を睨むと、

「離れろと言ったはずだ!」
と怒鳴った。

怯む祥子だったが、負けじと言い返す。

「そんなこと出来るわけないじゃないですか! 目の前であんな苦しそうにしてたら誰だって声かけるわよ!!」

「……そうだな。悪かった。」



「ところで、どうかされたんですか? こんな所で。」

祥子はあたりを見渡した。

「少し迷ってしまってな。入り口を探しているんだ。」

「入り口……?」

「あ、いや。なんでもない。気にするな。」