「私も、あの祥子が駆け落ちするなんて信じられません。でも…。」

でも、今も目の奥に焼き付いて離れない行き交う車のライトで、明るくなったり暗くなったりを繰り返す祥子のあの横顔が、すべてを語っているような気がした。

「あの実は私にも心当たりがございまして…。」

「心当たり?」

メイドに連れてこられたのは、屋敷の裏手にある倉庫のような所。


「3ヶ月ほど前にさお里ヶ丘のお屋敷で働いている先輩が、お屋敷の前で祥子お嬢様と親しげに話す男性を見たと…。」


「…! 誰ですか、それ。」

「あ、いえ。どこの誰かは分かりません。30代前後で長身の方だったとしか…。」


美代より少し歳上に見えるそのメイドは記憶を辿るように、一瞬、黙りこんだ。

「そういえば! その男性、鮮やかな金色の髪をしていたそうで――。」

「き…っ!」
美代は、思わず大声を出してしまう。慌て、両手で口を覆った。

あの祥子が金髪のチャラ男と親しげに話している光景が思い浮かばない。

「なんか、外国の方だったようで。」

その言葉に、さらに美代の頭は混乱してしまう。

「外国人…ですか……。」

その言葉に、美代は不安になった。


祥子が分からなくなってくる――。