「駆け落ちとは、いったいどういうことだ? 確証はあるのか…? まさか思い付きで言っているんじゃないだろうな。」

すごい剣幕の秀人は、組んでいた腕をといた。

怯む美代は後ずさるが、すでに閉められたドアが行く手を阻む。


覚悟を決めたように美代の顔付きが変わった。
ゴクリと生唾を飲む。

「祥子さんが行方不明になる数時間まえまで私たち一緒でした。その時、祥子さん、『付き合ってる人がいる』って。悲しそうな顔で……。あんな祥子さん初めて見ました。」

「でも、美代さん? だからと言って駆け落ちだというのは…。」

美佐子も言った。


「それに祥子は、もう25だ。それにあの祥子が周りに迷惑をかけるようなことはしない。」

秀人はそう言い切り、美代は屋敷を追い出されてしまった。

「お気をつけて、お帰りください。」

「すみません、色々と…。」


玄関先で、見送りにきたメイドに美代は頭を下げた。

「いえ。……あの少しお話ししたい事が…。お時間よろしいですか?」