「やはり、その事ですか…。」

そう言ってティノは、ため息をついた。

「知っているんじゃないか。」
ペルはニカッと笑うと、白い歯をみせた。

そんな笑顔を見て、何か言いたげだったティノは呆れたように言葉を失う。

「……この封書は?」

「誓約書だよ。ルギーを私の息子にするためのな。」

勝ち誇って言うペルに、申し訳なさそうに言った。

「陛下。水を差すようで大変恐縮ですが、陛下に限らず王室の方が王室以外の人間を養子にとることはできない決まりでは?」

「養子は無理だが…、結婚はできるだろう?」

「なるほど。それで『私の息子にする』ですか…。」納得したように言うティノだったが、その妙案にも1つ問題があったようだ。

「でも、陛下。どんな策を練ろうと、肝心の花嫁がいなくては話になりませんよ。」


「その心配はいらないさ。縁談は、もうまとまっている。異世界訪問は結婚前の息抜きと言うことさ。」

「…。」

ティノはその息抜きという言葉に表情を暗くし、押し黙る。

「……? どうした?」

「私は反対です。異世界に行かれるなど。危険です! 異通洞の向こうには魔物が住んでいると…!」

必死にそう訴えるティノ。

「そんなの昔話だよ。意外にお前も気が小さいんだな。」

「陛下! 私は陛下の身を案じて…!」

「心配するな。覗いてくるだけだ、向こうの世界を。」