「例の話とは?」

ルギーが退室したあと、部屋の隅にいた女性・ティノがペルに尋ねた。

ペルは振り返り、ソファーの背もたれに肘をついた。

「分かっているくせに。」
そう言って笑った。

「今日の会議のお話もその事に関係あるんですか?」

「話?」

ペルは再び煙草を取り出し、口にくわえた。

すると、ティノが近づいてきて、ペルがくわえていた煙草を抜き取った。
そして何事もなかったように続けた。

「城の裏手にある異通洞から陛下自ら異世界を訪れるというお話の事です。」

「あぁ、あの話か…。」

ペルは思い出したように言った。

「その話とこの話は関係ないさ。」

そう言って、ペルは立ち上がった。
書斎の壁際置かれた書棚から若草色の封書を抜き取った。

「この話は、カタがついたからな。」
そう言って手にしていた封書を無造作に放り投げた。

「ルギーを王室に迎えいれるに最も手っ取り早いやり方だ。……ルギーを私の息子にしようと思ってな。」