「陛下。さっきのお話は真ですか?」

スーツ姿の女性が、陛下と呼ばれた男性に駆け寄る。

艶のある黒髪をアップにした女性が、心配そうに続けた。


「皆 陛下の身を案じておりましたよ。」

落ち着いた雰囲気の書斎に入ると、男性は胸ポケットから、煙草を取り出して口にくわえ、火を点けた。

鮮やかな金色の髪が、開け放った窓からの冷たい風に揺れる。


「あいつらなど放っておけ。私の身を案じているなど口先だけだ。」

「しかし…。」


「それより、ルギーはどうした?」

男性はソファーに腰かけると、向かいに目当ての人物がいないことに気付き、辺りを見回した。

「訓練が長引いているようで、もうそろそろ来るころかと。」

部屋の隅に静かに立っていた女性は言った。


すると、部屋のドアが数回ノックされ、ドアの向こうから

「お待たせいたしました。」

と声がする。


その声の主がルギーだということを確かめるように、部屋の隅にいた女性はゆっくりドアに近づくと、ドアを開けた。


「お久しぶりでございます。ペルセウス陛下。」