この事をきっかけに2人の距離は急激に縮まりつつあった。

「ペルって、ずっと日本で暮らしてるの?」

「こっちに来たのは、つい最近だ。」

「じゃぁ、向こうで日本語 習ってたの? 母国語みたいに発音もアクセントも完璧だから…。」

「いや、向こうでも普段から日本語を使っていたからな。そのせいだろう。」

2人はよく住宅地を抜けたすぐ近くにある喫茶店でお茶を飲んでいた。


「それより、すまなかったな。…この前の事。」

「え?」

「いや…。ちゃんと謝っていなかったと思ってな。」

ペルが申し訳なさそうにいう。

「もう、気にしてないから。」
祥子は微笑んだ。

「君の笑顔が何よりの救いだ…。」
そう言ってペルも目を細くする。

クスクスと笑う祥子はレモネードの入ったグラスの淵を人差し指で軽く擦った。

「大袈裟。」

「大袈裟などではないさ。」

そして、ペルは付け足すように呟く。

「いつまで…。」


「何か言った?」

「いや、何でもない。」



いつまで、私は彼女の微笑みを
見つめることが出来るのだろう――。