男性とは、それからしばらく会うことはなかった。


祥子もあの金髪の外国人男性も、お互いがお互いの存在を忘れかけていたころ。

「あれ、あなた……あの時の…。」

それも前回と同じ時間帯、同じ場所だ。

「入り口は見つかりましたか?」
祥子は以前の男性の言葉を思い出し、冗談半分に言った。

すると、男性はすごい形相で祥子を睨むと祥子の左手首を掴む。

まるで手加減も何もしないような、乱暴な掴み方だった。


あまりの痛さに顔を歪める祥子に間髪入れず、今度は祥子の口元が何かに覆われる。

男性のもう一方の手だと気付いた時には、あまりの状況に祥子は動けずにいた。

「このような所で迂闊にいうな!」

「…!」

祥子は頷くしかなかった。