帰ってきた梓紗の目元は少し赤くなっていた。

『どうしたの?』とは聞けなかった。
もしかしたら、私のせいかもしれなかったから。


…絶対、さっきのは嘘。

絶対なんて、確証はないけれど。
嘘じゃないよって言われても。

そうなんじゃないのかと、私は疑ってしまう。
それと共に、罪悪感を感じる。

目が合わぬようにと、梓紗から目を逸【そ】らす私が途轍【とてつ】もなく汚い人間のように感じる。

先に口を開いたのは、




「…少し、私の話聞いてくれる?」





梓紗だ。




「…うん」





これから話される彼女の話を、聞きたいような、聞きたくないような。
そんな気持ちで私は彼女を見た。

逸らしたい。
その気持ちは今も変わらない。

あんなに、あんなに好きだったのに。

私は、友情よりも恋を取る、最悪な女。
その事実に、酷く呆れる。