肩に回された腕と、すぐそばにある体温。
そして、聞こえてくる陽平の鼓動。
自分が抱き締められていると気付いたのは、それらを認識してから少ししてからだった。
……抱き締められてる!?
「……ちょ、陽平!?」
焦った私は彼の名前を呼ぶ。
だ、抱き締めるなんて……、私の心臓、壊す気か!
私の叫びを聞いて、陽平は身体を離した。
「あ、ごめんごめん、つい、ぎゅっとしたくなって……」
ぎゅっとしたくなるって……!
茹でダコの様に真っ赤になった私を愛おしげに見つめて、陽平は微笑んでいる。
「じゃっ、じゃあ、私もう行くね……」
恥ずかしさから、その場を立ち去ろうとする私。
「送って行かなくて良い?」
「だ、大丈夫!」
私は慌てて言う。
送ってもらったりしたら、絶対に私は家につく前に死ぬ!
そう断った時の陽平の、捨てられた子犬みたいな顔さえも愛おしく感じてしまう。
私は笑って、言った。
「陽平、また明日ね!」
「おう!」
満面の笑顔でそう言う、陽平。
また、明日、いつものように図書館で。
それが、とてつもなく幸せに感じていた。


