君がいた夏



ついてきて……って、どのみち手をひかれてる私に選択肢はないと思うけど。


彼は身軽そうな細い身体を器用に人垣にねじこみ、私が通りやすいスペースをあけながら走っている。


お陰で、私たちはすいすいと進んでいく事ができていた。


ちょっと気になって後ろを見てみると、男の人たちはその図体の大きさが邪魔をして、なかなか進めないでいるようだ。


そのまましばらく走って、屋台の隅のほっそい路地裏を通り抜けて、ついた先は小さな公園だった。


走って走ってへとへとになっていた私は、手を離されたのでもう走らないと判断し、ブランコに腰をおろす。


はぁ、はぁと荒い息を整えながら、その少年がまずしたことは、あの三人が追いかけてきていないか確認する事だった。



そちらを見ている私に気付くと、安心させるように微笑んで、



「大丈夫、うまく撒けたみたい」



と言った。