君がいた夏



謎の男の子は、そんな私を見て眉をひそめた。


「……だからさ……さっさと離してやれよ……」



そう言うと、私の腕をつかむ男の人の腕をつかんで、一言低く「離せ」と言った。



次の瞬間には私の身体ごと彼の方に引き寄せられて、気付いたらずっとつかまれていた腕も解放されていた。



「はぁ!?おま、なんなんだよ!?」



男の人の激昂した声が響く。周りの人も驚いて、視線が集まる。



そんななか、私を背中の後ろに隠す彼は何故か面倒そうに溜め息をついて……言った。





「だから……ただの通行人だって」






また、そんな事を言ったらすごく怒りそうだな、とかそんな事がちらっと頭の隅に浮かぶ。



しかし、三人の反応を見る前に、目の前の男の子に手をひかれ、私たちは人ごみの中に飛び込んでいた。



「えっ……ええっ?」


突然の事に頭が追い付かない。それでも、彼が私の手を握っていること、それから走っていることはわかった。



「ちょっと走る!ついてきて」


前方から声が飛んでくる。