君がいた夏



まわりの喧騒を突き抜けて、しっかりとこちらに届いた声。


一斉に振り向いた先にいたのは、部活帰りなのだろうか?Tシャツにジャージの短パンというかなりラフな格好をした、同い年くらいの少年だった。


染めてるわけではなさそうだけど、髪は栗色がかっていて短く切り揃えており、なんだかスポーツやってそうな外見。


……というか、結構イケメン、の部類に入ると思う。




「……あ?なんだって?」



見とれてしまいぼうっとしていた私より、一足先に我に返ったらしい男の人が、不機嫌そうな声をあげる。



「え?聞こえなかった?その子離してやれよって言ったんだけど」



全く怯んだ様子のない、その少年の様子に、男の人の雰囲気が変わる。


わ、なんか、空気が危ない、一触即発って感じするんだけど。


「あ?てめぇ何様だ!?偉そうに言いやがって、こいつの何なんだよ!?」


……どこかで聞いたことあるような言葉。まさか、自分が当事者になるような事があるなんて。




つかまれている腕が段々ジンジンしてきてはいたけれど、私はどこか他人事のような気分で、頭上で交わされる会話を聞いていた。