君がいた夏



「ご、ごめんなさいっ……、私、もう帰るつもりだったんです……」


目の前の彼らに怯みつつ、立ち去るための言い訳を口に出した。


「えー、もっと楽しもうぜ」


「でも……門限とかあるんで……」


「真面目だなぁ。そんなこと気にしなくて良いじゃん」


「あーれー?この制服成桂じゃね?」


彼らの一人が、私の着ている制服を指さして言った。


「本当だ。頭良いんだなー。優等生ちゃんなんだ?」


確かに私の通う学校は進学校だ、けど。そうとわかった途端、彼らの目が変わった気がする。


ニヤニヤとした目に晒されて、背筋が粟立つ。ようやく、脳が警鐘を鳴らし始めた。


「本当に真面目ちゃんなんだなー。良いじゃんたまには」


「で、でも……」


何とかして口実をつけて、立ち去ろうとした時。


「んな固いこと言ってんじゃねぇよダルいから」


私の腕をつかむ人が発した低い声。


さっきまで笑ってたのに、突然口調が荒くなっていて、恐怖を感じた。


「あ、の……」


離して下さいと言おうとすると、男の人の腕をつかんでいる力が強くなった。



痛い、やだ、怖い、離して……。



そんな言葉が渦を巻き、私がパニックに陥ろうかという時だった。







「……離してやれよ、その子」