重そうな教材を片手に、親しげにジャレ合う男女。

がっしりした体格の、人当たりの良さそうな男が笑いながら言った。

「おまえは人殺してでも生きていく女だなっ!」

「はっ!?」

衝撃を受けたのは、バンドでもやってんですか?的風貌の、見るからに強そうな女。


『例えば、ちょっといいなっと思ってた男から、危険な認識をされていたり』



教科書を胸にかかえ、渡り廊下で立ち止まった、清純そうな、女の子。

前方から現れたのは、若い男性教師。

顔を真っ赤にしながら、彼女は小さくお辞儀をする。


『人はそれぞれにコンプレックスをかかえ、うまくいかない恋にやきもきする。

願わくばそんな奴らが…』



静かな風の音の中に、誰かの足音が混じる。

走ってくる。しかも複数。
激しくドアが開いた。

「「ちょっと聞いてよ!アキさんっっ!!」」

ほら…来た。

『願わくばそんな奴らが、俺に愚痴るのやめてくれたら…』


これは、椿山亜季人(ツバキヤマアキト)の苦難の日記である。