椿山亜季人の苦難日記

言葉の端々に、俺は、助けを求めていたんだろうか。

どうしたいのか、分かってるつもりなのに。

「わぁ、寒い。」

扉を開けて、やってきた日和ちゃんは、隣の手摺に手をかけた。


「さっき、千歌と、亮介くんとすれ違ったよ。」

とても、優しい声音。

「…うん。さっきまでいたよ。」

俺も、優しく答えた。

「二人と何があったの?」

表情が固くなったのが分かった。

「…ひどいことを、言ってしまったから。」


嘲るように言うと、日和ちゃんは意外にも頷くだけで、それ以上追求してこなかった。


謝罪を促す気配も無い。