椿山亜季人の苦難日記

それでも見た目には分からないくらい普通に、いつも通りに、笑って千歌へと向き合った。

千歌は、まっすぐに俺の目を見ていた。

「ん?」

上擦ることなく、ごく自然な返事ができた。



「何を悩んでるの?」

よく通る千歌の声。

「何も悩んでなんかないよ?」

「嘘だ。」

千歌の声は、さらに強くなった。俺は、その目に飲み込まれないように、平静さを保って返した。


「なんでそう思うの?」

「…だって、空気が変…。」

眉をひそめて言う千歌に、

「空気って…」

おかしいって、笑ってみせた。

内心は、千歌の的確さにドキドキしながら。