「この調子で行けば、第一志望も大丈夫だろう。椿山なら、そつなくこなすし、本番もミスなんてしそうにないしな。
もう少し目標をあげてもいいと思うぞ。」


そんなこと、ペラペラと、担任が話す。この人は面白いことを言うもんだな、と。

ミスなんてものじゃない、失態も、行き詰まりだってするのに。











夏休みだというのに、学校には、ほぼ毎日来ていた。

課題なら、大方終わったし、借りていた本を読みあさって、

それから亮介をからかって、千歌のツッコミきいて、日和ちゃんに癒されて、

俺は、そんな毎日に満足していた。


それでも、少しずつ、先行きがあやしくなっていきそうな、妙なざわつきを感じてはいた。


日和ちゃんが壊れてしまわなければいい、

あいつらが傷つかなければいい…。



涼しくなった夕方に、秋の気配を感じていた。


暑い夕方、わずかに紫色に染まる空を見上げて、思った。


『時が、進まなければいいのに。』



流れには、逆らえないってことぐらい、知っているけど。