「えっと...それはまだ考えてないんだけど...」

谷崎はぎこちない笑顔でそう言った。

そんな顔しないで。
良心が痛む。

「ごめん、今日急ぐから、もう帰るね!」

この場から、谷崎の苦笑いから、一刻も早く逃げ出したかった私は、そう言うと同時に駅へ向かって走り出した。

「えっ!ちょ!梨本(なしもと)!!」

背後から聞こえた、谷崎の私を呼ぶ声には聞こえぬふりをして、私は点滅していた青信号を一気に渡り終えると、

後ろを振り返ることなく、ただひたすら歩き続けた。